太陽光パネルの新たな適地探しが急ピッチで進んでいる。適地とされ、これまで開発が進んできた山林などには空きがなくなり、住民理解を得にくいことが理由だ。代わって候補に挙がるのは農地や空港、ため池、駐車場といった場所だ。脱炭素社会の実現には、太陽光のさらなる導入が必須だ。新しい適地の開拓は不可欠だが、災害対策など懸念材料も多い。
山林やゴルフ場跡地は飽和
遊休地と化していた山林の開発、バブル崩壊後に経営が行き詰まったゴルフ場の転用が盛んだった。周辺に遮るものがなく、安定した日射量を確保できることで「適地」となった。事業者もFITの売電価格の高さに目をつけ、発電事業者のみならず大小問わずあらゆる事業者が参画して開発は一気に進んだ。
だが、狭い国土での開発には限界が来た。近年は開発できる山林が減少、ゴルフ場の跡地なども少なくなってきたのだ。条件を満たす太陽光パネルを設置できる適地はもう飽和なのが実態だ。
農地、空港などが新「適地」に浮上
政府は脱炭素化を進める目的で、これまで厳しい制限を敷いていた場所の規制を緩和した。最たる例が農地だ。日本には19年11月末時点で、東京ドーム約6万個の広さに相当する2840平方キロメートルの荒廃農地が存在する。
荒廃農地や耕作放棄地の活用策として登場したのが、農業をしながら、太陽光発電をする営農発電(ソーラーシェアリング)だ。農作物による収入と太陽光パネルからの売電による収入を得ることができる。
政府も営農発電を後押しする。13年に営農発電を設置できるよう、農地転用に例外をもうけた。21年には荒廃農地でソーラーシェアリングを実施する場合は収穫量8割確保の要件を求めない方針を出すなど規制緩和が進む。
安定した日射量を確保できる空港を活用する動きも活発だ。国土交通省によると、国や民間が管理する空港の少なくとも18空港に、太陽光発電が導入されている。
国交省は21年6月、空港での二酸化炭素(CO2)削減に向けた取り組みの一つとして、30年までに230万キロワットの太陽光を導入する目標を掲げた。
ため池や駐車場の設置広がる
発電事業者が注目するのは、ため池などの「水上太陽光」だ。不動産の運用事業や再生可能エネルギーの開発を手掛けるいちごは、18年に水上太陽光の「いちご笠岡岩野池ECO発電所」(岡山県笠岡市)を建設した。
資源総合システムによると、13年時点の導入発電量は約1000キロワットだったが、20年には約28万2000キロワットに増加。30年には約266万2000キロワットになる見通し。足元では、ため池を中心に設置が広がる。資源総合システムの杉渕康一氏は「海やダムへの設置が進むかが、導入加速に向けたカギとなる」と話す。